
ここ数年、毎年のように耳にする「熱中症」。
今年は梅雨入りしたと思ったら、まだ六月中旬なのに猛暑。
訪問診療では、暑さの感覚がわからなくなってきている認知症の老人の方々が多いので、無事にこの夏を乗り切って頂くことがテーマになってきます。今日も早速、ダウンジャケットを着込んで、車椅子を自走して「お水をください〜」と懇願しながら事務所の閉まった扉の前で待っている老人に出会いました、、、うちの患者様でした💦
急いで一緒に彼女の部屋まで戻り、ダウンジャケットを脱いでいただくと、その下に毛糸のカーディガン、その下に長袖ブラウス、その下に長袖下着まで着て、真っ赤な顔をされています。「暑くてしんどくなるからこれ脱ぎましょう!」と言うと、笑顔で頷かれますが、しばらくすると、またダウンジャケット姿で廊下を自走されている姿に出会いました。介護者もマンパワー不足で、なかなかお一人お一人手がまわせないのが介護現場の現状なんです。
認知症のない別の老婦人は、おぼつかない足取りで自販機でペットボトルのミネラルWaterを買われ、「しんどいです。やっとお水飲めた、美味しいです。」と笑顔。「お水だけでなく、塩分もとってくださいね」と説明すると、お煎餅や塩鮭のおにぎりを見せてくださいました。こんな方は安心です。
熱中症を防ぐには、水分、塩分のこまめな補給、エアコンをつけて暑さを避ける、衣服の工夫の三つが基本中の基本で、老人達が苦手とするところです。
「衣服の工夫」については、街中で見かける、半ズボン中心の真夏の服装の欧米人インバウンドの方々の方が得意かもしれませんね。日本人はまだ6月だからと真夏の格好を躊躇するところがありますから。
さらに日本人らしい盲点は、「我慢する体質」です。周りの人に気遣い、「クラッときても休むのが申し訳ない」から何事もないかのごとく我慢する。「まだ大丈夫!頑張れる」と自分のしんどさを軽視して意識しないようにする。忙しさを理由に、人目も気にして、仕事中に水分補給を怠る。
こういう美徳のために、自分の身体の悲鳴に気づけず、危険信号を鈍らせてしまいます。
書いた、本来の処方薬の保険を外して、自分で薬を自由に買って使うことが、セルフケアではなく、自分の身体に問いかけて、労わることが、本当のセルフケアだと思います。実は私自身も苦手なことなのですが、これができている人は皆さんお元気です。
先日参加した学会で「腸内細菌の異常」が万病(原因のわからない心身の不調)に関係するといった話題が出ていましたが、熱中症にも関わっている可能性があります。猛暑のストレスで腸内環境が乱れるために、体温調節機能が低下する可能性です。腸内環境を良くするために、お味噌、お醤油、お漬物、納豆、塩麹、醤油麹などの日本の発酵食品や植物繊維の豊富な食品をいただくことは夏の熱中症予防策として理にかなっていると思います。
梅干しもいいですね。塩分とクエン酸が豊富ですから。
たらふく備蓄米を食べるのではなく、少量でも安全なご飯で日本古来からの発酵食品で胃腸を労りながら異常な夏を乗り切りたいものです。
(写真の猫は近くのお寺の猫で、とっても長生きの子です。)